スライスしたお肉に塩・胡椒をし、薄く小麦粉をはたいて、溶き卵にくぐらせてパン粉をまとわせ、高音の油で揚げる豚カツ。
噛むと、肉汁と程よい脂身が口の中にあふれて、美味しいですよね。
その豚カツを卵でとじたカツ丼は、もはや王道の人気食です。
お店によって、玉ねぎや卵の火の通し方が違ったり、仕上げに三つ葉を乗せたり、ネギを載せたり、はたまたソースカツ丼やトマトカツ丼など変わり種があったりと、バリエーションも豊富です。
そんなカツ丼を作るとき、ロース肉を使いますか? ヒレ肉を使いますか?
そもそも、お肉の部位でロースとヒレとの違いはなんでしょうか。
ちょっと見てみましょう。
ロースとヒレとの違いは?
まずはロース。
英語では「loin(ロイン)」と言います。
ちなみにサーロインステーキの「サーロイン」は「sirloin」です。
豚の背中の方の肉で、肩に近いものを「肩ロース」、よりお尻側にあるものを「ロース」と呼びます。
ほかの部位に比べて肉色がやや淡く、霜降りを帯びていることがあります。
また脂身が多いため独特のコクがあります。
タンパク質、ビタミンB1、ナイアシン、リン、カリウム、カルシウムが多く含まれています。
次にヒレですが、英語では「fillet(フィレ)」と言います。
背中の方にあるロース肉よりも、より体の中心の方にある、筋肉質なお肉で、ロース肉に比べると取れる量はわずかです。
全体にわたって肉色は赤めで、豚肉の中で最も肉質がきめが細かい一方、 脂肪が少なく、あっさりした味です。
ビタミンB1、タンパク質、ナイアシン、ビタミンB6、亜鉛、りん、ビタミンB2、パントテン酸が多く含まれています。
ロースカツとヒレカツと、カロリーはどう違う?
ヒレ肉は筋肉質なお肉だと分かりましたが、カロリーも少ないのでしょうか。
生肉100gあたりで比べると、
ロース肉:約263kcal
ヒレ肉:約115kcal
となんと倍以上の開きがあります(一般的な数値)。
では、豚カツにした時のカロリーはどうかというと、
ロース肉:約346kcal
ヒレ肉:約300kcal
と差が縮みました。
これは、どういうことかというと「揚げている」ことに理由があります。
揚げる時、衣だけでなく赤身のお肉も油を吸収しますが、もともと脂身だったところは油を吸収しにくいのです。
ヒレ肉は脂身が少なく、赤身が多いため、吸収する油も多いのでした。
カツ丼にするならば、ロース肉がおすすめ!
カロリーだけを見ると、豚カツにするのにはヒレの方がヘルシーだな、と思いがちですが、実はヘルシーなのはロース肉の方なのです。
それは、ビタミンB1(チアミン)の含有量に理由があります。
疲れた時には豚肉!というのはなんとなく頭で分かっていますが、それは豚肉に多く含まれるビタミンBが糖質の代謝を上げ、疲労を抑える効果があるからなのでした。
人間は運動する時に、筋肉の中の糖(グリコーゲン)を燃やしてエネルギーにしますが、この時にビタミンB1を使います。
なので、ビタミンB1が不足していると、力が出ないばかりかグリコーゲンの不完全燃焼を引き起こし、疲労物質である乳酸が筋肉内に溜まってしまうのです。
また大量のブドウ糖をエネルギー源にして働く脳は、実はビタミンB1も大量に必要としています。
そしてビタミンBは脂溶性です。
なので同じ豚肉でもより脂身の多いロース肉に、ビタミンBが多く含まれているのです。
揚げた時のカロリーにそんなに差がないのであれば、体内の糖質や脂肪の代謝効果を考えて、ロース肉の方がいいですよね。
またカツ丼に欠かせない卵のタンパク質に含まれる必須アミノ酸は、体への吸収が早く、疲労回復や筋肉の再生をサポートしてくれます。
疲れた時だけでなく、勝負を決めたい時に「カツ丼」というのは、実は理にかなっているのでした。