今年の秋は、なかなか気温が下がらず、紅葉を楽しむことができませんでした。
最近、一気に気温が下がり、樹々の葉が遅れた冬を取り戻すかのように慌てて色づいてきました。
朝晩の寒暖差が大きくなることで起きる紅葉。四季のある日本ならではの自然の色の移り変わり。
赤に黄色にオレンジに、これから訪れる冬の寂しさを忘れさせてくれるようなカラフルさです。
紅葉を愛でることを「紅葉狩り」と言いますが、梅や桜を愛でることは「花見」と言います。どうして紅葉は「狩る」のでしょうか。
まずは「狩り」の意味を調べてみましょう。
三省堂大辞林によると「かり(狩り・猟)」には
1、野生の鳥や獣をとること。猟。狩猟。季語冬。
2、犯罪者などを捜索し、つかまえること。
3、自然の中に分け入って、野草や貝などをとったり、花やもみじを鑑賞したりすること。
の意味があり、「紅葉狩り」にはこの(3)の意味が使われていることになります。
花を観賞することも、「狩り」で、「桜狩り」という言い方もあるのですが、今は一般的ではありません。
今から約1,200年前の平安時代にまで遡るとその理由が分かります。
平安貴族たちは、自邸の庭に桜を植え、その美しさを愛でていましたが、紅葉は植えておらず、山まで出かけないと見ることができなかったのです。
山まで出かけて「狩る」から「紅葉狩り」となったのですね。
一方桜は、そこにあって見ることができるから「花見」となったのです。
紅葉は秋の季語。有名な俳句をご紹介しましょう
春といえば桜のように、秋といえば紅葉です。
その紅葉は秋の季語となっており、たくさんの俳句が詠まれています。
どの俳句も紅葉の鮮烈な赤やオレンジの色合いがまぶたに浮かんできます。
人毎の 口に有也 したもみぢ / 松尾芭蕉
したもみじ、とは葉っぱの下の方が色づいた紅葉のことです。
色づいてきたと口々に語っているのでしょう。
紅葉して 寺あるさまの 梢かな / 与謝蕪村
静かなお寺に赤々とした紅葉が浮かびます。
夕紅葉 谷残虹の 消かかる / 小林一茶
谷あいに消えかかる虹と夕陽、そしてそれが照らす紅葉。
一幅の絵画のようですね。
古寺に 灯のともりたる 紅葉哉 / 正岡子規
モノトーンの色合いにパッと鮮やかな色味がさしました。
山の雨 案内の恨む 紅葉かな / 夏目漱石
せっかく紅葉狩りをしようと思ったのに雨が降ってきました。
大紅葉 燃え上らんと しつつあり / 高浜虚子
まさに山肌を燃え上がらせるような紅葉です。
紅葉狩りに行く時の服装は?
「狩る」のですから、砂利道や落ち葉がたくさんある舗装されていない道を歩くことは容易に想像できます。
なので、まず靴としてピンヒールはNGです。
フラットなパンプスかブーツ、できればスニーカーがベストです。
汚れることも予想されるので、防水スプレーなどを予めかけておくといいでしょう。
草木の多いところに行くので、ふわっとしたスカートも避けた方がいいですね。
思わぬところで裾を引っ掛けてしまいます。
ベストはパンツスタイル。それも細身がいいでしょう。
紅葉の季節は朝晩の寒暖差が激しいので、調整できるようにストールか軽い羽織ものを用意すると安心です。
また美しい紅葉と一緒に写真を撮りたい場合は、紅葉がよく映えるように、グレーやグリーンなどの色味を選びましょう。
とにかく歩くのが紅葉狩りです。
おしゃれに気を取られすぎて、歩けなくなってしまった!という事態だけは避けましょう。
季節の移り変わりを上手に楽しもう
せっかく四季のはっきりしている日本に住んでいるのですから、季節の移ろいは上手に楽しみましょう。
山間へ紅葉狩りに行けない人でも、街路樹や近くのお寺など紅葉の植わっているところで紅葉を楽しむことができます。
忙しいと、ついつい目線が下がりがちですが、たまには上を見上げて周りを見渡して、心身共にリフレッシュさせましょう。
紅葉を狩ることができる心の余裕を、どんな時でも持っていたいものです。